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「一号館の屋上から男が飛び降りた」
70年代春―
卒業式の当日朝、午前0時に駒場警備員室に一本の電話が入った。


急いで駆けつけてみると、そこには怯え切った女学生が泣きじゃくっているだけで、
男の投身死体などどこにも見当たらない。
その日はそのまま事なきを得たまま、女学生を家に帰したが、
警備員の胸騒ぎはおさまりきらなかった。


一時期これは学生の間で噂となり、
実際に見たという証言もそこかしこで聞かれることがあったという。
しかし、実際に死体が見つかることも無く、
目撃者も少数であったため、
よくある下らない嘘話として、次第に話題から消えていった。
同じくして警備員室にくる電話もぱったりとなくなり、
駒場キャンパスはいつもの平穏を取り戻すこととなる。


しかし、これには裏がある。


駒場一号館で過去、投身自殺者がいたのは事実である。
大学院修士の卒業が決まりながらも進路が決まらず、
将来を悲観した男子学生が卒業式の日の午前0時自ら命を断った。
(取材の中の話では教授の嫌がらせなどがあったとのことだが、諸説あり。)
目撃者はおらず騒ぎになるのを恐れた大学側は、
朝になるまでに事態を隠蔽したといわれている。
その年の卒業式は滞りなく行われた。


この日以来午前0時に飛び降りる人影を目撃したと言う連絡が警備室に入ることになる。
大学側は噂の広まりを恐れ、結果一つの案を採用する。
一号館における四つの時計が同時に12時を指さないよう、
「学生に気づかれない程度に少しずつ時間をずらす」というものだ。


取材班の調査では、
南面を中心に、北面は15秒程度、東面は10秒程度、西面は20秒程度ずれていた。


これ以降目撃情報は日に日に減少し、最終的になくなったと言う。


もしかしたら今でも一号館の屋上には飛び降りるタイミングが分からず、
右往左往する男の影があるのかもしれない。

projected by 東大夢七夜 制作スタッフ
企画構成:東大企画


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物語は一部フィクションを含みます。あくまでお話としてお楽しみください。
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